薬王堂気まぐれ通信使№801  2019-6-16
Yakuoudo Capricious Communications Satellite

今日は一年に一度、安芸薬剤師会が主催する薬草に親しむ会に参加してきました。
十数年講師を務めさせていただいております。
そろそろ後継者に任務をお譲したいと願っています。
今回は安芸郡坂町の八幡神社周辺の薬草、および一般植物との違いなどについてお話をさせていただきました。
朝、10時に坂八幡神社に集合しました。(歴史!)
近隣から参加くださった方々は約25名、スタッフ5名からなる観察会となりました。


昨年の7月6日の豪雨で坂町は大きな被害を受けました。
同町、水尻や小屋裏では人的被害もあり大災害となっております。
八幡神社前の参道には土砂が流れ込み鳥居の向こうの建築物は一階上まで浸水したとのことです。
八幡神社入り口に水害被害の碑石が建っています。
明治43年にも絵下山からの土砂崩れによって46名の犠牲者が出たと記されていました。
天災は忘れた頃にやってくる!とはこのことでしょう・・

私が記憶している坂八幡神社は参道の両側に水田が拡がり建物らしいものは全くない平地でした。
もう65年くらい前のことです。
少し小高い場所にある八幡神社社叢を抜け、山道に入って目に入る植物の解説をします。


中央が坂八幡神社社叢



アラカシ
スダジイ
クロガネモチ
トウネズミモチ
イヌビワ
イタビカズラ
カクレミノ
リョウブ
ヤブツバキ
カナメモチ
サカキ
マサキ
エノキ
ヤツデ
・・
などの樹木がありました。
ムクノキがありました。
薬にはしませんがなぜムクノキと名前が付いたか、わかりますか?と質問したところだれからもお返事がありません。
それでは私の説をお教えします!と参加者の一人に十円玉を提出してもらいます。
ムクノキの葉を取って差し出された十円玉を葉裏でこすってみました。
茶色にくすんでいた十円玉は、くっきりと平等院の図柄が現れて光り輝きます
ムクノキとは「剥く木」が語源で乾燥させた葉裏で擦り、漆器の艶出しとか、昔の鏡の表面を研いだり、刀の仕上げに使っていた植物なんです!と言うと皆さん、ほ~と言って十円玉に見入ります


ジャノヒゲの根の肥大した部分を見てもらう!



次に気が付いたのはジャノヒゲ、
ジャノヒゲは普段よく目にしている植物です。
根掘りで掘り返し「根にある肥大した部分を集めて麦門冬といい、咳止めの漢方生薬にします!」と説明すると皆さんこれまたほ~~と・・
漢方知識を持つ専門家も実際の植物を掘り起こしてまで確認することは少ないようです。
小高い丘に登ってゆきました。

ウメ     (烏梅)
モモ    (桃仁・桃葉)
ナガイモ  (山薬)
チャノキ  (茶)
ドクダミ  (十薬・魚腥草)
カキドオシ (連銭草)
・・・
と、薬用にしますが、ひと(人)臭い植物が現れてきます。
ヒサカキは仏前に供えることもあるけれど神前にはサカキを使用する由、「否榊」のようです!と説明するとこれまたほ~~!
だんだん薬とは関係無い植物に眼が移ってゆきました。
ナワシロイチゴの熟れた実を口に入れ、クワの実に歓声を上げます。
かつて養蚕が盛んな頃にはマグワが多く栽培されていました。
野生のヤマグワとの交雑種も出来ているようですがヤマグワの実は花柄が残り食べたときに咽に引っかかる感じがします。
それに比べマグワには花柄痕がほとんどないので食べやすくなっています。
雑種も多いとのことですがここのものはマグワに近い種類に思えました。


クワの実



クワ⇒桑⇒桑葉⇒桑の実⇒桑椹子⇒桑の樹皮⇒桑白皮⇒蚕⇒白僵蚕⇒絹・・・・

クワの木だけで話はどんどん拡大してゆきました。
最期にセキショウの生える小川の傍に集まります。


セキショウの話をする筆者


セキショウはサトイモ科の植物で清流を好み清涼感の香りがする根茎は痰を消し解毒の効果もあって健忘症や耳鳴り、頭痛などの薬として使うことがあります!というと、ほ~~!と見入られます。
ハゼノキの大木がありました。
かつてこの近辺ではハゼロウ(櫨蝋)を採るために栽培されていた歴史があります。
エジソンが電球を発明したことでハゼロウの栽培は衰退しますがその名残があるようです。

これでいいのか??

ヨモギ⇒艾葉
センニンソウ⇒威霊仙
アケビ⇒木通
フジ⇒藤瘤
・・・
などなど植物を手に取りながら薬と係る事柄の解説をしてゆきました。
最期にマダケが長けた竹の子として空に伸びています。
足元にある竹の子の皮を手に取っていただき何を想像するか?訪ねてみました。
さすが年配の方からは返事が返ってきます。
そう、今のように包装紙が無い時代に育った私の年代はマダケの皮で肉を包んだり握り飯を入れて運んだもんです。
中には梅干しを入れて角から酸っぱい汁を吸ったとか・・・
そこまでおやつに困っていたわけでもありませんが毛のないマダケの皮は物を包むものとして重宝されてきました。
そんな、こんな、取り留めのない話しをしながら2時間のフィールド・オブザベーション・ミーティングを終了した次第です。


もう一度、
こんなにしていただき、これでいいのだろうか???
日々、反省を繰り返す私です!
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